2009年 09月 20日
※下記の投稿は2009年のもので、最近では、dna解析が進んでいるようです。 種の分類や下記の投稿は現在のものと相違していますのでご容赦くださいませ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
●マダラウミウシ Dendrodoris rubra (Kelaart, 1858) ●クロシタナシウミウシ Dendrodoris fumata (Ruppell & Leuckart, 1831) 先日の観察会において、マダラウミウシとクロシタナシウミウシは、こんなに色合いが違うのに 同じ種なのですか?との質問を頂きました。 ウミウシは種類によってそれぞれ食べるものが決まっています。その食べ物を食すときに用いる 歯舌はウミウシの種類によって形が違うので、ウミウシの種類を調べるときの重要な手がかりと なります。 よって、この二つのウミウシ、マダラウミウシとクロシタナシウミウシは、食べ物が同じで、同じ歯舌 だと確認されている・・・と思ったら、大間違い^^;; クロシタナシウミウシは、漢字で書くと黒舌無海牛。文字通り舌が無いんです。彼らの属するデンドロ ドーリス属は歯舌を持たないようで、種の特定が難しく、そのために学者によって種別混乱があるよう なのです。 ・マダラウミウシ Dendrodoris rubraはクロシタナシウミウシ Dendrodoris fumata」または ホンクロシタナシウミウシ Dendrodoris nigraのカラーフォームである。 ・上記の記載は、解剖学的な根拠に基づくものではなさそうなので、マダラウミウシ Dendrodoris rubraをクロシタナシウミウシ Dendrodoris fumataのシノニムと決め付けるのは問題がある。 ’本州のウミウシ’を見ると、「マダラウミウシとされていた斑紋のある個体は数が少なく、洞窟の奥など 光の差し込まない場所にいることが多く、動きは活発ではない。対して黒色や赤褐色の個体は数が多 く、浅所、日光の差し込む平坦な場所や壁面など広範囲に見られ、活発に動く」と書かれています。 5年前にkouchaが初めてゲットしたウミウシがマダラウミウシでした。その後、沢山のマダラウミウシ、 クロシタナシウミウシを見てきましたが、上記の’本州のウミウシ’の記述と全く同じ感想です。マダラウミウシ は大抵、石の裏側にくっ付いているし、クロシタナシウミウシは明るい磯を歩いています。(ただマダラウミウシ は三浦では沢山見られます) これだけ生態を見ても違いのある2種を同じ種とするのは、ちょっと無理があるような気もします。 クロシタナシウミウシ(デンドロドーリス属 2007.2.10) マダラウミウシ(デンドロドーリス属 2007.4.15) ホンクロシタナシウミウシ(デンドロドーリス属 2008.9.28) ホンクロシタナシウミウシは、クロシタナシウミウシに似ているが、二次鰓が小さくカップ状である。 ホンクロシタナシウミウシ(ゴールドバージョン)(デンドロドーリス属 2009.1.18)
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| 2009-09-20 09:23
| ウミウシいろいろ
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Comments(11)
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はやしば
at 2009-09-20 20:46
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種名の決定は形態第一なのですね。生息域による色彩型の違いは分離しないという主義で通せば、マダラはやはりクロシタナシですね。中間的な色彩もいますし。
ただ、生息域が違うということは食べ物も異なり、生態も異なってきますからね。それにより形態が変わった時点で、晴れて別種扱いになるということらしいです。いまのところ、明るいところを歩き回る黒色型と、石の陰に多いマダラ型は、生態と色彩は異なっても形態までは異ならない、という段階なのでは。 鳥で言えば三浦半島の名物・クロサギも、珊瑚礁域に棲むものは真っ白の白色型もいますが、シラサギでなくクロサギなんですね。色は正反対でも同じ形なんです。 ただ、野鳥や魚の場合は地域亜種が多くあります。同じ種のキツツキでも北海道と沖縄ではだいぶ色彩が違ったり、各地の水系でイワナの模様が異なったりしていて、それぞれに立派な亜種名があります。 ウミウシにも亜種という概念を用いれば、この問題もすっきりしそうに思えるのですけどね。ウミウシ図鑑には亜種という分類はないようですね。
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ニシメガネザル
at 2009-09-20 21:08
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なんか今本さんのところのサイトで、結局、別種扱いになったようなコラムがあった、、、、気がしますが。ラドマン先生? ほのかな記憶ですが。
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ニシメガネザル
at 2009-09-20 21:34
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自己レスですみませんが、どうも ↑ そういうことでもないようですね。今本さんも「?」と考えるという感じでした。
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sea-slug at 2009-09-20 23:58
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sea-slug at 2009-09-21 00:01
ニシメガネザルさんへ
そうですね、結局’?’という表記しかないような気がします。種名決定の 定義が明確であれば(あるのかな?)それに基づいた導き方になるとは 思うのですが・・・。堂々巡りの繰り返しになっちゃいそうです(笑)
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GEN
at 2009-09-22 09:08
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皆さんの勉強熱心ぶりには頭が下がります。きれいだぁ~で終わって
しまう私は、まだまだマニアではないようです。ちょっと安心しました。(笑) お話を聞いている限り、クロシタナシとマダラは分化の途中ということ でしょうか。長い時間をかけて徐々に分化するので、現時点で分化が 完了しているのか、未完了なのかを断定するのは難しいのでしょうね。 クロシタナシとマダラは交接するのか? そして、産まれる子供はちゃんと子孫を残せる体なのか? 気になってきました...
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sea-slug at 2009-09-22 10:44
GENさんへ
これだけウミウシと関わってきたんだから、少しは知っておかなければな あという50オヤジのあがきです(笑) 昨年、今年とお会いした男鹿のウミウシさんのHPに興味深い記述があり ました。 ttp://www.geocities.jp/umiusidenki/day06b 11/22の日記のところです。 水槽飼育で、クロシタナシとマダラの卵塊の色が違うこと、両種は交接を しなかったこと、食したカイメンの色など・・・。 この記述を読むと、分化完了なのかもしれませんね。
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GEN
at 2009-09-23 13:04
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sea-slug at 2009-09-24 07:05
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さくぺろ
at 2022-07-17 15:25
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2009年の記事へのコメントになってしまいますが、最近気になって調べていたところ、2015年にお茶の水大学の先生(現在は東海大学)がDendrodoris属5種(D. arborescens クロシタナシウミウシ, D. denisoniミヤコウミウシ, D. guttataヒメマダラウミウシ, D. nigraホンクロシタナシウミウシ, and D. rubraマダラウミウシ)とダイダイウミウシ(Doriopsilla miniata)についてDNAと幼生の形態の比較から6種は別種だという論文を出されていました。
https://www.researchgate.net/publication/284833457_Identification_of_five_species_of_Dendrodoris_Mollusca_Nudibranchia_from_Japan_using_DNA_barcode_and_larval_characters 全文はweb上に公開されておらずアブストしか読めていません。 ただし、このブログの記事に書いてあるときとクロシタナシウミウシの学名が変わっていますね。 現在はクロシタナシウミウシは、D. arborescensという学名が一般的なようです。 このブログでつかわれていたD. rubraは、現在でもD. fumataのシノニムとされているようです。 和名との対応をまとめないとよくわからないですね。 また、論文中で使われているD. denisoniという学名も2006年の論文でDendrodoris krusensterniiのシノニムとされているようです(ミヤコウミウシという和名は変わらず)。 https://www.researchgate.net/publication/313373006_Dorid_nudibranchs_described_by_JE_Gray_in_ME_Gray_1842-1857_Mollusca_Opisthobranchia
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sea-slug
at 2022-07-17 18:33
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さくぺろさんへ
いろいろとありがとうございます。 最近はdna解析がずいぶんと進んでいるようですね。 他にもいろいろとあると思われますが、 この投稿は古いものであることを記載しておくようにします。 |
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